遺言書を作成すべきケース|遺言 1

遺言書を作成すべきケース|遺言 1

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遺言書の必要性

人は生きている間、自分の財産をどのように処分するのかを自由に判断できます。自分の財産に対する自由は、基本的に死後も尊重されるべきでしょう。しかし、死後に自分の考えを示すことはできません。それゆえ、生前に死後の財産の処分についての意思を示しておく必要があります。財産処分に関する一定の考えを遺言書で示しておくことは、遺された親族間のトラブルを防ぐことにもつながります。

遺書との違い

なお、遺言書は日常生活の中で遺書とも呼ばれてます。しかし、厳密には、両者に以下の違いがあります。

遺言書
民法の定める厳格な方式に従って作成し、法的な効力が備わった文書のみを指す
遺書
故人が遺した文書全般を指します。

一方、遺言書と似ている言葉として、「遺言」があります。本来は、遺言書に書かれている故人の考えのことを遺言と言います。けれども、遺言書の意味で「遺言」を使うこともあります。両者は同じ意味を持っていると考えても支障ありません。

どんな場合に遺言書を作成すべきなのか

遺言書は、遺言者(被相続人)が、自分の財産について、「誰に」「どのように分配」して欲しいのかを明確にする手段として作成されます。

①相続人のうち特定の人に多くの財産を与えたい場合

配偶者や子など特定の人に多くの財産を与えることを遺言書に明記します。これにより、法定相続分にとらわれることなく、希望通りの財産分配を実現することができるようになります。

②相続人以外の人に財産を与えたい場合

相続権がない人(内縁の配偶者、お世話になった人等)に財産を遺したいという目的がある場合があります。この場合は、相続権がない人に財産を与える(遺贈にあたります)ことと、どのくらいの財産を与えたいのかを、遺言書の中で明記してくことが必要です。遺言書を作成しておかないと、相続権がない人に対し、自分の死後に財産を与えることができなくなります

③財産を停止条件付あるいは負担付で与えたい場合

自分の財産を与えるに際し、「結婚した時に財産を与える」という停止条件や「ペットの面倒をみること」という負担をつけたい。そのような場合には必ず遺言書の作成が必要です。条件の内容が成就した時に遺言の効力が生じるとするのが停止条件財産を受け取る人に一定の義務を与えるのが負担です。遺言書に停止条件や負担を明記しなければ、停止条件や負担のない状態で、遺言者の死後に財産が承継されてしまいます

④個人事業の後継者を指名する場合

さらに、遺言者が会社を設立せず個人で事業をしていた場合は、遺言書の中で後継者を指名することがあります。事業用の不動産や機械などは、個人事業のときは相続財産に含まれます。それらが法定相続分に従って分割されると、事業の継続が困難になる事態も考えられます。そこで、法定相続分とは異なる分割方法の指定として、後継者に指名したい者に対し、事業に必要な不動産や機械などの一切を承継させることを明記した遺言書を作成することで、事業承継をスムーズに行うことができるというメリットがあります。

⑤相続人の廃除を行いたい場合

以上に対し、特定の相続人に自分の財産を一切与えたくない場合もあります。この場合、相続人の廃除を行うことが考えられます。相続人の廃除は遺言書に明記して行うこともできます。ただし、相続人の廃除を実現させるためには、家庭裁判所の審判が必要です。その際、家庭裁判所が廃除を認めないこともある点に注意を要します。

 遺言書にはどんなことを記載するのか

法的な効力が備わった遺言書を作成するためには、法律上意味のある事柄を記載することが必要です。これを「遺言事項」と呼ぶことがあります。遺言事項は、以下のように分類されます。

法律によって遺言でしか行うことが許されない事柄に関する事項
  • 遺贈
  • 遺産分割方法の指定をする場合
  • 遺言執行者(遺言書の内容を実現してくれる人のこと)の指定
生前に他の方法で行うことができる法律上の事柄を遺言によって行う場合に記載する事項
  • 婚外子の父親による認知
  • 相続人の廃除
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