内縁と相続|相続と遺産分割 12

内縁と相続|相続と遺産分割 12

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内縁とは

婚姻届の提出という法律が定めた手続きを経ている男女の関係の事を法律婚と言います。

これに対し、夫婦として生活しているという実態はあるものの、婚姻届を提出していない男女の関係のことを内縁と言います。内縁は事実婚と呼ばれることもあります。

男女の関係が内縁であると認められるには、以下のことが必要であると考えられています。

  1. 夫婦として共同して生活している実体があること
  2. 夫婦として共同生活をする合意が成立していること

現在は、内縁の夫婦についても、法律婚の夫婦と大差ない扱いがなされつつあります。たとえば、内縁の配偶者を健康保険の被扶養者にすることができます。また、一方が死亡した場合に配偶者として遺族年金を受給することができる場合もあります。

内縁関係では相続が発生しない

しかし、内縁の夫婦の一方が死亡しても、生存配偶者が相続人になることはできません。2018年の法改正で新設された特別寄与料の請求も対象外です。相続の場面では、現状、内縁の配偶者の地位は非常に弱いと言わざるをえません。

したがって、内縁の夫婦の一方が死亡した場合に財産を配偶者に遺すためには、以下の方法が必要です。

  1. 死因贈与の契約を結んでおく
  2. 配偶者に遺贈するとの遺言書を作成しておく
  3. (生存中から非課税枠の範囲で少しずつ財産を贈与しておく)

特別縁故者は相続人が1人もいない場合に認められる

内縁の夫婦の一方が死亡した場合、

  • 内縁の配偶者と故人が同居し、
  • 生活に必要な費用を共有するとともに、
  • 故人の療養看護をするなど、

故人と密接な関係があったと認められる場合は、特別縁故者として財産が分け与えられる可能性があります。

しかし、特別縁故者の制度は、相続人が1人もいない場合に、初めて認められる制度です。したがって、死亡した内縁の配偶者に相続人がいるときは、死因贈与や遺贈がない限り、その相続人が相続財産の配分を受けます。それゆえ、その場合、内縁の配偶者は相続財産の配分を受けることができなくなります。

死因贈与と遺贈

①死因贈与

死因贈与とは、自分の死後に自己の財産を譲ることを、財産を譲り受ける者との間で生前に約束しておくことです。「自分が死亡したら、〇〇に自宅の土地と建物を譲ります」。というように、自分の死亡を条件とした贈与契約が死因贈与です。

また、死因贈与の契約を交わす相手に制限はなく、相続人や家族に限られません。遺言等で特段の指定等がない限り、死後に財産を譲り受けるのは法定相続人に限られます。しかし、死因贈与の場合は、財産を譲り受ける者に制限はありません。

②遺贈

遺贈とは、遺言によって、自己の財産(相続財産)を、自分の死後、誰かに譲ることを言います。生前に、自分の死後に財産を譲る相手を指定できるという点に特徴があります。死因贈与と同様、財産を譲る相手は、相続人や家族に限られません。また、人だけでなく、会社等の団体に対して遺贈することもできます。単なる相続の場合、財産を譲り受けるのは法定相続人に限られますが、遺贈の場合、財産を譲り受ける者は法定相続人に限られません。

(包括遺贈と特定遺贈)

遺贈には包括遺贈と特定遺贈があります。

包括遺贈とは、「全財産の半分を〇〇に遺贈する」というように、すべての相続財産のうちの割合を示して遺贈することを言います。

これに対し、特定遺贈とは、特定の不動産や株式等、譲る財産を指定して遺贈する方法です。「自宅は〇〇に、A社の株式は△△に」。というように、譲り渡す財産とその相手を遺言の中で指定する方法で行われます。

遺贈と死因贈与の共通点・相違点

・共通点

両方とも「自分の死後」「財産を譲る相手を」「生前のうちに」決めておくという点で同じです。また、財産を譲る相手が、相続人に限られないという点も共通しています。

・相違点

遺贈は、必ず遺言書を作成して行う必要があります。また、財産を譲る人が単独でこれを行うことができます。遺言書という書式を通して有効になるものなので、口頭によるものは認められません。

これに対し、遺言で死因贈与を行うことはできません。贈与なので、財産を譲る人ともらう人の間で贈与契約を交わす必要があります。一般的には贈与契約書を作成して行います。ただし、贈与契約書の作成は必須ではなく、口頭による約束でも成立します。

内縁の夫婦間の子の相続分はどうなるか

①母子関係

母との親子関係は分娩の事実によって当然に母子関係が認められます。そのため、内縁の夫婦間の子は、当然に母の相続人としての地位を取得します。

②父子関係

一方、父との親子関係は当然には認められず、認知があった後に父子関係を認めることが可能になります。その場合、婚外子(非嫡出子)として扱われるものの、法律婚における子(嫡出子)と同等の法定相続分が認められます。

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