寄与分|相続と遺産分割 8

寄与分|相続と遺産分割 8

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看護や事業援助があれば「寄与分」を主張できる

生前、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人には、遺産分割による相続分にその貢献の度合いに応じた相続分を加算できます。この増加分を寄与分と言います。

法定相続分に沿って相続を行うと、自営業者の親の仕事をずっと無償で手伝ってきた長男と、そうではない次男も同じ割合で財産を相続することになります。貢献度に関係なく2人がもらえる金額が同じでは、不公平となります。寄与分も特別受益と同様に相続人の不公平を是正するための制度です。

寄与分の対象者

  1. 被相続人の事業に関する労務の提供をした人
  2. 被相続人の事業に関する財産上の給付をした人
  3. 被相続人の療養看護をした人

ただし、上記のいずれかに当てはまれば寄与分を認められるというわけではありません。相続人が療養看護をすることで医療や看護の費用支出を避けることができた。といったように、相続財産の維持や増加への貢献が求められます。そのほか、特別な貢献があったと判断されやすい要素として次の点が挙げられます。

  1. 対価(報酬など)を得ていなかった
  2. ある程度の期間(相当期間)にわたり貢献を継続していた
  3. 結果的に貢献につながったわけではなく、被相続人に対する貢献を主要な目的としていた

なお、寄与分は相続人にしか認められていません。それゆえ、相続人ではない叔父や叔母などが事業の資金援助などの貢献をしたとしても、寄与分を主張することはできません。ただし、相続人と同一視できる事情や身分関係(配偶者など)がある場合は、相続人の寄与行為として認められる場合があります。

寄与分の金額の算定は難題である

貢献度に応じて寄与分を決めると言っても、その金額の算定は難しいでしょう。寄与分が認められるためには、被相続人への「特別な貢献」がなければならず、通常の手伝いなどは対象になりません。介護も親子の扶養義務の範囲内と考えらえ、寄与分とは認められないことが多いのです。

寄与分は、通常、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。しかし、明確な基準がないうえに、一人の寄与分が認められれば、他の人の相続分が減ります。皆が納得できるように話し合いで決めるのは難しいものとなります。話し合いで解決できない時は、寄与分を主張する人が家庭裁判所へ調停の申立てを行うことになります。調停で調停委員を交えて解決を図ることになります。

介護に対する寄与分は遺言に反映させるのが望ましい

介護の苦労や貢献度は、ほかの人にはなかなか伝わりにくい面があります。それゆえ介護に対する寄与分は相続トラブルになりやすいです。また、実際の介護費用を確定することも難しく、相続の話し合いの時にもめる大きな要因の一つです。

・子供が被相続人を介護

特に子どもが親の介護をする際に介護費用を親の預金から使うと、ほかの相続人から用途や金額について疑いをもたれることもあります。「介護にかかった時間を時給で換算してみる」。「仮に外部の施設に任せた場合の費用はいくらかを試算する」。このようなデータを提示して他の相続人に納得を促す必要性が生じることがあります。

介護で貢献した子どもがいる場合、親がその労力に感謝し生前に対策しておくと子どもは助かります。そのためには、遺言を残すことが効果的です。被相続人が遺言でその労いを反映させておくことで無用な争いを防ぐことができます。

・相続人以外の人(長男の嫁など)が被相続人を介護

また、長男の嫁など相続人以外の人が義父や義母を介護する場合もあります。相続人でない人は残された財産を相続することも寄与分の請求もできません。ただ、過去の判例で、相続人の妻の寄与行為を「相続人の寄与分」として認められたケースもあります。夫に代わり介護したのだから、その行為は相続人の行為とみなすという趣旨です。

しかし、原則として寄与分を主張できるのは相続人だけです。また、相続人であってもとくに介護の場合は寄与分が認められにくいです。従って、被相続人が遺言で介護者の寄与分について表明するのが望ましいです。

介護記録の重要性

現在、介護されている方は可能なかぎり介護費用を記録しておくべきです。支払った介護費用の領収書はすべて保管しておくと良いです。自分で介護費用を負担している場合はもちろん、親のお金で介護している場合も同様です。相続開始後に他の相続人から財産の着服など疑いをかけられないようにするためです。相続では、仲のいい兄弟姉妹であっても、ささいなことでもめごとに発展しまいがちです。円満に相続できるよう、金銭的なことはきちんと説明できるようにしておきましょう。

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