生命保険金と死亡退職金|相続税・贈与税 10

生命保険金と死亡退職金|相続税・贈与税 10

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生命保険金が課税対象になる場合

故人(被相続人)を被保険者とする生命保険金を受け取った場合、保険契約者(保険料の支払人)が被相続人かどうかにより、相続税所得税贈与税のうちいずれかの税の課税対象とされます。

契約する生命保険の内容により税金が変わる

まず、保険契約者が被相続人の場合は、みなし相続財産として相続税が課税されます。

次に、保険契約者が被相続人以外で、保険契約者が保険金受取人である場合は所得税が課税されます。

一時金として受け取れば、一時所得となり、受取保険金から払込保険料総額を差し引いた金額から50万円を控除した金額の2分の1が一時所得の金額となります。年金として受け取ったときは雑所得となり、受取保険金から払込保険料総額を差し引いたものが雑所得の金額となります。

そして、保険契約者が被相続人以外で、保険契約者が保険金受取人と異なるときは、保険料負担から贈与を受けたとして贈与税が課税されます。受取保険金額がそのまま贈与税の課税対象となります。

被保険者 保険契約者(保険料支払人) 保険金受取人 対象となる税金
被相続人 被相続人 相続人 相続税
被相続人以外 左記と同一人物 所得税
被相続人以外 左記と違う人物 贈与税

死亡退職金が課税対象になる場合とは

被相続人の死亡によって、遺族が被相続人の退職金を受け取る場合、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続財産とみなされて相続税の課税対象になります。

それ以後に支給が確定した退職金手当等については、相続税ではなく、受け取った人の一時所得として扱われます。受け取った退職金をもとに計算した金額の2分の1に対して、所得税が課税されます。ただし、勤務年数が5年以下の一定の役員は、受け取った退職金をもとに計算した金額の全額に対して所得税が課税されます。

相続税の課税対象になる場合は非課税限度額がある

相続税の課税対象になる生命保険金には非課税限度額があります。相続人が受け取った金額の合計が「500万円×法定相続人」以内であれば、相続税が課税されません。相続人が受け取った退職金(死亡退職金)の金額も同様に扱われます。

なお、相続放棄者がいても法定相続人の数に含まれるので、含めた人数で非課税限度額を計算します。

相続人を受取人とする生命保険のメリット

したがって、被相続人が、生前に相続人を受取人とする生命保険金を支払うことで、非課税限度額を利用した相続税対策が可能です。

また、生命保険は、相続開始後に短期間で現金を受け取ることができるメリットがあります。被相続人が死亡すると、銀行は被相続人名義の預金口座を凍結するので、遺産分割協議が終了するなど、遺産の分割方法が確定するまで、預金を引き出すことができません。この点、預貯金の仮払い制度創設により預金の引き出しが前もって行えるようにはなりました。しかし、葬儀費用や当面の生活費用のことを考慮すれば、生命保険の方が相続人にとって利便性が高いと言えます。

(参照)預貯金の仮払いを認める制度など

遺産分割が終了するまで、被相続人の預貯金口座が凍結されてしまうことで、相続人に負担が生じる場合があります。たとえば、被相続人が被相続人の預貯金債権を使って、被相続人の葬儀などの費用に充てたいと考えている場合です。この場合、ある程度時間が必要になる遺産分割が終了しなければ、常に預貯金債権の払い戻しを受けられないとなると、葬儀などをする上で障害になります。

相続財産には、被相続人の死亡後の相続人の生活保障という役割もあります。そのため、相続人が生活費などに切迫した事情があるときにも、預貯金債権を全く使用できなくなると、この役割に反する結果につながりかねません。

①預貯金分割の仮処分

そこで、2018年の相続法改正に伴う改正家事事件手続法により、人が相続債務(被相続人の生前に第三者に負っていた債務のこと)の返済や、相続人の生活費などに充てるため、遺産分割の対象である預貯金債権を使用する急迫の必要が生じた場合は、家庭裁判所に保全処分を求めることで、相続人は預貯金債権の仮払いを受けることができるようになりました。これを預貯金分割の仮処分といいます。なお、仮処分の申立てができるのは、家庭裁判所に遺産分割の審判や調停を申し立てている場合に限られます。

②家庭裁判所の判断を経由せず直接金融機関から払い戻しを受ける方法

さらに、2018年の相続法改正により、家庭裁判所に遺産分割の審判や調停を申し立てていなくても、預貯金債権の仮払いが認められる場合があります。被相続人の葬儀や相続人の生活費などに充てる必要がある場合、相続開始時の預貯金債権の3分の1に、その相続人の法定相続分を掛けた金額のうち、150万円を上限として、銀行などへ直接、預貯金債権の仮払いを求めることができます。

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