どのような場合に利用するのか
相続人が複数いる場合、通常は遺産分割協議によって遺産分割を行います。
しかし、特定の相続人が遺産分割協議に応じなければ、遺産分割協議ができません。遺産分割協議は相続人全員の参加が必要であるためです。
また、遺産分割協議によって相続人全員の合意に至ることができない場合は、遺産分割協議を終了させることができません。
このような状況に至った時は、家庭裁判所に遺産分割の申し立てを行い、裁判所の力を借りて遺産分割することになります。
家庭裁判所への申し立ての種類
家庭裁判所への申立てには、調停の申立てと審判の申立ての2種類があります。
審判を申し立てる場合に、審判に先立って調停を申し立てるケースもあります。遺産分割の申立ては、先に調停の申立てをしなければならないわけではありません。しかし、審判の申立てをしても、家庭裁判所の判断により、調停手続きが先に行われることが多いです。
そして、調停不成立の場合に、審判手続きへと移行します。
手続きのフロー
遺産分割の調停を申し立てた場合、あるいは審判の申立てをしても家庭裁判所の判断で調停手続きに回された場合には、裁判官と調停委員(弁護士や医師などの専門家が担当します)による調停委員会が構成されます。
そして、調停委員会が各相続人など当事者の言い分を聴き取り、相続人全員が合意に至ることができるように合意をあっせんし、当事者の意見を調整するなど合意に向けてさまざまな援助を試みます。
調停の結果、相続人全員の合意に至った場合には、合意した内容を調停調書という文書に記載することで、遺産分割が終了します。
調停不成立の場合
これに対し、合意に至らないなど調停が不成立になった場合には、自動的に遺産分割は審判手続きに移行することになります。
遺産分割の審判手続きにおいては、概ね次のようになります。
- 相続人や相続財産の範囲、相続財産の評価に関する問題など、遺産分割の前提問題が解決
- 債務や遺贈の有無、特別受益や寄与分の対象になる相続人の有無などを確認
- さまざまな事情を考慮した上で、遺産分割に関する一定の判断を示す
調停手続きとは異なり、審判手続きにおいては、当事者が遺産分割について合意に達しなくても、遺産分割に関する判断を先送りにすることはありません。
審判による遺産分割は、原則として相続財産をそのままの形態で分割する現物分割が基本です。
審判の内容に不服がある人は、審判の内容が知らされた日から2週間以内に、高等裁判所に不服申立てをすることが可能です。(これを即時抗告といいます)。