遺産分割以外の相続トラブル

遺産分割以外の相続トラブル

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どんな場合に問題になるのか

相続をめぐっては、遺産分割に関するトラブル以外にも、その前提問題についてトラブルが生じることがあります。

①相続人の範囲に争いがある場合(行方不明者がいる場合も含む)

相続財産を配分する前提として、相続人の範囲に関する問題があります。相続人に含まれる人を含めていなかったり、反対に含まれない無関係の人(相続欠格者、廃除された人、相続放棄をした人等)を含めたりして、相続財産の配分をしてしまうことも考えられます。

まず、相続人に含まれる人を含めていない遺産分割は、遺産分割終了後に認知された子が生じた場合を除き、当然に無効となりますから、遺産分割のやり直しが必要です。

一方、無関係の人が含まれている場合で、遺産分割が終了しているときは、無関係の人に対する遺産分割の効力が否定されます。この場合は、相続人に含まれる人は全員参加していますから、遺産分割全体を無効にする必要はありません。そして、無関係の人に配分した相続財産についてのみ、相続人全員で改めて遺産分割協議をします。

なお、相続人の中に行方不明者が含まれる場合、家庭裁判所に不在管理人の選任を請求する必要があります。遺産分割は、本人の意向が重要な要素であるため、選任された不在者管理人が遺産分割に加わるときは、別途に家庭裁判所の許可が必要です。

②遺産の範囲に争いがある場合

ある財産が相続財産であるかどうかが不明である場合など、遺産の範囲に関する問題もあります。遺産分割の審判では、審判をする前提として、家庭裁判所が遺産の範囲に関する判断を示しますが、この判断には、相続人を拘束する効力が無いとされています。したがって、特定の財産が遺産に含まれるか否かを判断する遺産確認の訴えという民事訴訟を提起することが必要になります。

遺留分侵害請求など

遺産分割の前提問題以外にも、相続をめぐるトラブルとして遺留分をめぐる争いがあります。遺産分割によって遺留分を侵害された兄弟姉妹以外の相続人は、自分の遺留分を確保するため、遺留分侵害請求をすることができます。

その他、遺言者の遺した遺言が方式に反する場合などは、その遺言が無効になることがあります。これらのトラブルについても、家庭裁判所に調停を求めたり、通常の民事訴訟を提起したりすることが可能です。

相続人の中に認知症の人がいる場合

遺産分割の手続きに際し、相続人の中に重い認知症や精神障害などで判断能力に欠ける者や不十分な者がいる場合でも、相続人としての権利を持っているため、その人を除外して遺産分割協議をすることはできません。

相続人の中に重い認知症などの人がいるときは、家庭裁判所に対し、その人を成年被後見人にするよう申し立て、成年後見人を選任してもらう必要があります。これを後見開始の審判といいます。

成年後見人は、判断能力に欠ける成年被後見人が不利益を被ることのないように、その代理人の立場として、財産管理や遺産分割協議などを行います。ただし、成年後見人が成年被後見人とともに相続人の1人である場合は、後見監督人(後見人の業務を監視する人のこと)が遺産分割協議を行います。もし、後見監督人がいなければ、家庭裁判所に選任してもらった特別代理人が遺産分割協議を行います。

相続人の中に行方不明者がいる場合

相続人の中に行方不明者がいる場合は、その人の戸籍の附票などから住所を特定することが可能です。しかし、記載された住所に戻ってくる見込みがなければ、家庭裁判所に行方不明者に対する不在者財産管理人を選任してもらう必要があります。そして、選任された不在者財産管理人が、家庭裁判所の許可を得て、行方不明者の代わりに遺産分割協議を行います。

7年以上行方不明で生死不明な者が相続人の中にいる場合、家庭裁判所に失踪申告の申立てをすることで、その人を行方不明時から7年後に死亡したとみなして、遺産分割ができます。(普通失踪)。また、船舶、飛行機事故、震災などの危難が去ってから1年間生死不明である場合、失踪宣告の申立てにより、危難が去った時点で死亡したとみなし、遺産分割できます(特別失踪)。

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