遺産分割協議|遺産分割 2

遺産分割協議|遺産分割 2

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遺産分割はいつまでに行うべきか

民法上、期限はない

民法では、遺産分割協議の成立に関して期限を設けていません。相続財産を放置し続けることは好ましくありませんが、故人(被相続人)の死後から長期間経過後に遺産分割協議がまとまったとしても、民法上の問題は生じません。

相続税法上のメリットを享受するため10ヶ月以内に成立させるべき

しかし、相続税に関して、相続税法は原則として10カ月以内という申告期限を設けています。

遺贈や相続によって相続財産を取得した受遺者や相続人は相続税の課税対象者に含まれます。けれども、相続人が被相続人の配偶者である場合は、「配偶者の税額の軽減」によって相続税をゼロまたは軽減させることができます。また、被相続人が事業用や居住用で利用していた土地を遺贈や相続によって取得した場合は、「小規模宅地の特例」により、一定の要件の下で税額の控除が認められます。

これらの特典を受けるには、相続人や受遺者が申告期限内に控除を希望することを記載した申告書と、添付書類として遺産分割協議書の写しなどを提出する必要があります。したがって、遺産分割協議自体に期限はありませんが、相続税の申告期限との関係では、上記の特典を受けるため、10カ月以内に遺産分割協議を成立させるべきでしょう。

相続人の中に未成年者がいる場合

遺産分割協議に関して、相続人の中に未成年者がいる場合は注意が必要です。

未成年者は、原則として1人で契約などをする権限が認められていません。未成年者の契約には、法定代理人が代理することが必要になります。法定代理人には親権者(親権者がいない場合などは未成年後見人)が就任します。未成年者の父母が親権者であることが通常ですが、未成年者が養子に出ているときは養父母が親権者です。

利益相反行為に該当する場合、子の特別代理人を選任しなければならない

ここで、夫が死亡して、妻と未成年者である子が相続人になるような場合、親権者である妻(未成年者の母)と子は、遺産分割を巡り利益が相反する地位に置かれます。母が遺産をたくさん相続すれば、その分だけ子が相続する遺産が少なくなるからです。

両者の利益が相反する場合、親権者は未成年者の法定代理人として遺産分割協議に参加することができません。これを利益相反行為といいます。利益相反行為が生じる場合、親権者は、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てなければならず、選任された特別代理人が未成年者を代理して遺産分割協議を行います。

遺産分割協議が成立するとどうなる

遺産分割協議において、相続財産の配分について相続人全員(包括受遺者がいる場合は包括受遺者を含みます)が合意に達すると、遺産分割協議が成立します。その後、民法では要求していませんが、遺産分割が成立した証拠として、必ず遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議によって各相続人に配分されることが決定した相続財産については、遺産分割協議の成立時に相続財産を取得したと扱われるのではなく、相続開始時にさかのぼって、相続開始時から各相続人に配分される相続財産が帰属していたものと扱われます。

遺産分割協議にあたっては、相続人全員の合意に基づき、法定相続分などと異なる配分をすることが可能です。

また、特定の相続人が相続財産の配分を受けないとする場合、本来は相続放棄の手続きを取ることが必要です。しかし、遺産分割協議によって相続財産を特定の相続人のみが取得すると定めることで、相続財産の配分を受けない相続人について、相続放棄と似た状態をつくり出すことができます。(これを事実上の放棄と呼ぶことがあります)。

その他、相続財産の配分を受けない相続人が、自分に相続分が存在しないことを証明する書類を作成することがあります。これを相続分不存在証明書(特別受益証明書)といいます。相続分不存在証明書には署名と実印による押印が必要で、これを作成した相続人は遺産分割協議書に参加する必要がなくなります。しかし、相続財産の配分を受けない相続人も、自分の法定相続分の範囲において、借金などの債務は承継するため、相続放棄をした場合を除き、故人の債権者からの支払請求に応じなければなりません。

遺産分割協議が成立しない場合には

遺産分割協議では、相続財産の配分をめぐって、相続人同士の意見が調整できない場合もあります。

その場合は、遺産分割協議による相続財産の配分を諦めて、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺産分割に関する審判を申し立てることになります。審判を申し立てても、ただちに審判手続きが開始されることは少なく、審判手続きに先立ち、調停手続きから開始されることが多いです。

遺産分割協議のやり直しはできるか

いったん有効に成立した遺産分割協議について、相続人全員の合意が得られた場合は、後からやり直すことが認められると考えられています。遺産分割協議全体をやり直すことも可能ですし、一部の相続財産に関する遺産分割協議のみをやり直すこともできます。

さらに、成立したはずの遺産分割協議が、後から無効になったり取り消される場合がある点に注意が必要です。

まず、遺産分割協議が無効になる場合として、相続人全員が遺産分割協議に参加していない場合が挙げられます。遺産分割協議は相続人全員が参加しなければならず、一部の相続人が参加してない遺産分割協議は無効ですから、やり直さなければなりません。

ただし、被相続人の配偶者と子による遺産分割協議の成立後、子の認知が生じて、相続人が追加されることになった場合は、遺産分割協議をやり直す必要はありません。認知された子は、他の相続人に相続相当分の金銭の支払いを請求できるにとどまります。

遺産分割協議の成立後、新たな相続財産が見つかった場合も、遺産分割協議をすべてやり直す必要はなく、その財産についてのみ、新たに遺産分割を行うことができます。

なお、遺産分割協議は相続人全員の意思を合致させて、相続財産を配分するという性質の行為であるため、契約などと同様に、錯誤や詐欺に基づく取消しによって、遺産分割協議の効力が否定される場合があることにも注意が必要です。

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