自筆証書遺言の注意点|遺言 4

自筆証書遺言の注意点|遺言 4

税理士ドットコム 不動産投資 体験セミナー

記載内容が不明確な遺言書はどのように扱うか

民法が定める方式に従って作成された遺言書は、その内容を実現していく必要があります。

とくに自筆証書遺言において記載内容が不明確な場合にトラブルの原因となることがあります。

  • 遺言書の文字が判読できない
  • 記載内容が一見して矛盾する

①記載内容が不明確である理由が、遺言者が意図したものでない場合

遺言書が汚れて文字の判読が難しい。推敲不十分で記載内容が矛盾しているように見える。このような場合には、遺言書が書き記した真意をくみ取って、遺言内容を解釈することが許されます。その際には、遺言書作成当時の事情や遺言者の置かれていた状況なども考慮することができます。

②解釈によっても真意が不明確な場合

こうなると、記載内容が不明確な部分は存在しないものとして扱うことになります。

日付の記載がない遺言書

自筆証書遺言の場合、遺言者が自ら日付を自書することが必要とされており、日付の自書がない自筆証書遺言は無効です。

ただし、具体的に暦日を用いて記載しなくてもかまいません。遺言書が作成された年月日を特定できれば良いため、例えば「〇〇歳の遺言者の誕生日」と記載していれば、客観的に特定可能な日付が記載されたものとして認められます。

記載されている日付に誤りがあれば、遺言書の作成年月日が特定できません。その場合の自筆証書遺言は無効になりえます。しかし、客観的に誤記があることが明白な場合は、遺言者が本来記載しようとした日付に作成された遺言であると扱う余地があります。

遺言書が2通ある

遺言者は自由に遺言の取消し(撤回)をすることができます。たとえば、「先の遺言を取り消す」ことを明らかにした上で、新たに作成した「後の遺言」によって、先の遺言を取り消すことができます。

しかし、後の遺言で取消しを明らかにしなくても、内容が前後で矛盾する場合には、後の遺言が有効であり、先の遺言は取り消されたものと扱います。

どんな場合に遺言の取消が問題になるか

遺言は、遺言者が生前に作成し、遺言者が死亡した時点で効力が発生します。しかし、生きている間に、遺言者が作成当初とは異なる考えを持つようになって、遺言の内容を変更したいと思う場合もありえます。また、遺言者を取り巻く事情が変動し、遺言の内容を修正しなければならない場合もあるでしょう。

そこで、遺言の効力が発生する前であれば、遺言の取消し(撤回)が自由に認められています。全部の取消し、その一部の取消しともに可能です。取消をしていなくても、遺言者が遺言書を意図的に破棄したときは、破棄された部分あるいは遺言全体が取り消されたものとして扱います。

遺言の取消しは遺言で行うこと

遺言は作成時点における遺言者の考えを反映している点から、それを取消す場合にも、遺言者の確かな考えに基づく取消であることを遺言によって明らかにする必要があります。

もっとも遺言を取り消すことが明確にされていなくても、前後の遺言の内容が客観的に両立不可能である場合は、前の遺言が取り消されたものと扱われます。

取消しの遺言の方式は同じものでなくても良い

遺言の取消については、当初の遺言と同じ方式で取消を行うことは要求されていません。たとえば、当初の遺言が公正証書遺言の方式によって作成されていた場合、この遺言の取消を行うために作成した遺言が自筆証書遺言の方式であったとしても、民法が定める方式に従って作成されていれば、自筆証書遺言による公正証書遺言の取消が認められます。

遺産分割後に遺言書が発見された場合

遺産分割を終えた後に、故人(被相続人)が作成した遺言書が発見された場合は、遺産分割の効力が問題になります。とくに問題になるのは、以下の場合です。

①遺産分割の当事者の範囲に影響が生じる

遺産分割協議に参加していた相続人が遺言により廃除されていた場合、当事者の範囲に変動が生じます。この場合、家庭裁判所で廃除の審判が確定すると、相続人でない人が参加したとして遺産分割の効力が否定され、再分割の必要が生じます。

②遺産分割の対象である相続遺産の範囲に変動が生じる

遺言により遺贈(特定遺贈)がされており、相続財産に含めることができない特定の財産を、遺産分割により相続人に分配してしまった場合です。この場合、遺産分割全体に影響があるときは、遺産分割全体の効力が否定され、再分割の必要が生じると考えられています。

アットセミナー