遺言の種類|遺言 2

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遺言書は、遺言者が生前に自分の死後の財産処分に関する意向を明確にしつつ、その意向に法的な効力を備えさせることができる書面です。

遺言の種類

民法が要求する遺言の方式には、大きく普通方式と特別方式に分類することができます。それぞれの方式に以下のような種類の遺言があります。

普通方式
  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言
特別方式
  • 死亡の危急に迫った者の遺言
  • 伝染病隔離者の遺言
  • 在船者の遺言
  • 船舶遭難者の遺言

特別方式による遺言は、遺言者が書面を作成する余裕のない状況下での遺言を保障するためのものです。そのような状況は非常に稀なので、通常は普通方式で遺言書を作成することになります。

普通方式に含まれる3つの方式は、いずれも遺言書という書面を作成することが必要とされています。遺言は遺言者の生前の意向を明確にすることを目的として行われるものです。しかし、それは遺言者の死後に再確認することができません。そこで、法制度では、遺言について厳格な方式に基づいて作成された書面は遺言者の意向が正確に反映されたものと認めることにしています。

普通方式は自筆証書遺言と公正証書遺言が利用されている

①自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、

  1. 遺言者が書面に全文・日付・氏名自書した上で、
  2. その書面に遺言者が押印することによって、

成立する遺言を言います。

他人が遺言書の作成に関与しないので、誰にも知られることなく比較的簡単に作成することができます。

なお、2018年の相続法改正により、2019年1月以降は、添付書類である財産目録に限り、自書ではなくパソコンなどで作成することが可能になりました。その場合、全頁に遺言者が署名押印をすることが要求されます。

②公正証書遺言

公正証書遺言とは、

  1. 遺言者が遺言の内容を公証人に伝えて、
  2. その内容を公証人公正証書の形で書面化したものに、
  3. 遺言者・証人・公証人署名押印することによって、

成立する遺言を言います。

公正証書遺言の作成は、遺言者が公証人や証人の目の前で、遺言内容を伝える手続きが必要です。従って、他人により遺言内容を改ざんされる危険が非常に少ないというメリットがあります。

しかし、公証人や証人の目の前で遺言内容を知らせなければなりません。遺言者が誰にも知られることなく遺言を残したい場合は不相応です。

③秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、

  1. 遺言者が遺言書を作成して封印し、
  2. その封書に遺言者・公証人・証人署名押印して

成立する遺言を言います。

遺言の存在自体は明らかになりますが、本文を自書する必要がなく、遺言内容は他人に知られません。ただし、秘密証書遺言については、自筆証書遺言よりも作成の手続きが煩雑であることから、あまり利用されていません。

特別方式は例外的な方式である

特別方式は、普通方式による遺言ができない状況の下で、例外的に認められる方式です。そのため、特別方式による遺言をした人が、普通方式による遺言ができる状態になった時点から6カ月間生存している場合、特別方式による遺言の効力が失われてしまいます。

①死亡の危急に迫った者の遺言

  1. 病気などのために死が差し迫っている人が、
  2. 3人以上の証人の立ち合いの下で、
  3. そのうちの1名が遺言者から伝え聞いた(口授という)遺言内容を書面に記す

ことによって成立する遺言を言います。遺言者が遺言をした日から20日以内に、家庭裁判所の確認を得なければ、遺言としての効力が認められません。

②伝染病隔離者の遺言
  1. 伝染病などのために隔離された人が、
  2. 警察官1名証人1名以上の立ち合いの下で、
  3. 自ら遺言書を作成する

ことによって成立する遺言を言います。遺言書を作成する際に自書であるか否かは問われません。

③在船者の遺言
  1. 船舶の上にいる人が、
  2. 船長あるいは事務員1名証人2名以上の立ち合いの下で、
  3. 自ら遺言書を作成する

ことによって成立する遺言を言います。伝染病隔離者の遺言と同様で、自書による必要はありません。

④船舶遭難者の遺言

船舶の上にいる人について、船舶が遭難したために死が差し迫っている場合に用いることができる遺言を言います。

証人2名以上が立ち会いの下で、遺言者が遺言内容を伝え、証人が遺言内容を書面に起こすことになります。証人は遺言者の目の前で書面を作成する必要はなく、証人もまた船舶が遭難している状況にあるため、遭難状態が解消された後に書面を作成することも認められます。

ただし、遺言者が遺言書の作成過程に関わっていないため、家庭裁判所の確認を得ることが必要です。

遺言書の代筆は認められるのか

自筆証書遺言は、遺言者の意向を遺言者の筆跡で作成された遺言書で明らかにします。すなわち、原則として代筆は許されません。

ただし、病気等の影響で自力では字を書くことが困難なケースもありえます。その場合、添え手程度であれば、代筆にあたらず許されると考えられています。遺言者の自由な筆記に対して影響を与えていないことが条件となります。

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